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オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case作者:森 博嗣講談社Amazon オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case (講談社ノベルス)作者:森博嗣講談社Amazon オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case 犀川創平の登場はこれで最後です…
リップスティック リップクリーム、否、リップスティック4本も入っているがま口 ピンクが3本、あとモイスチャ それから初めて自分で買った口紅 ちふれの 口紅を塗るとおひなさまのようだ でなければ七五三 赤い蝶々が机にいるよ びろうどで出来ているの 三…
お洋服を買う。 食事を買う。 サプリを買う。 欲しいものを買う。 仕事の紹介雑誌を買う。 若いうちの苦労は買ってでもしろと書いてあったので棄てようと、市の指定ごみ袋を買う。 家具を棄てる為に、大型廃棄物回収券を買う。木曜の八時半に、アパートのし…
みちゃん。 ララは悲しそうに思った。 みちゃん、どうして私たちはこんなになってしまったの? 瞼の後ろで、真っ赤なモミジの葉がばらばらと大量に散っていった。
今よりお利口ではなかった頃、死にたい気持ちのときは誰か仲良くしてくれているひとに、死にたい、と伝えなければ、ちゃんと死にたいになっていないような気がしていた。伝えるツールとして、携帯電話のメールでひとに構って貰うのが、便利過ぎた時代のタイ…
子どもの頃住んでいたマンションの近くに、紙屋川という川が流れていた。ほんの浅くて、けれども勾配の荒い土地なので橋からはとても遠く見下ろす場所を流れていて、春は桜並木が川に手を述べていた。 暖かくなった頃、幼稚園からどじょうを貰って帰ったこと…
空を飛びたい、と思った、わけではないのかも知れない。きっと好きだったのは、真っ白な雲だ。雲のうえに、居たかった。「サン・テグジュペリなら出来たのに」 早苗木は呟く。サン・テグジュペリなら。自分が飛行機操縦士だったなら。飛行機に乗る免許取得の…
貝の背中。 ランゲルハンス島みたいだな。ランゲルハンス島って知ってる? 海に浮かぶ島の話じゃなくて? その島の話じゃなくて。 きみが海の話をすると、エミは僅かにからだを硬くするのが分かる。エミは海を知らない。エミは野原も知らない。エミは自然観…
ミルナは鏡のなかにいる。 行旅死亡人 - Wikipedia 行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは、日本において、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者を指す言葉で、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称でも…
学問について ひとつの箱があり、箱には値が対応している。もうひとつの箱があり、その箱に対応する値は、最初の箱のなかの値によって変動する。 それが、函数だ。 函は元々「箱」の意で用いられていた。近代、「函数」が「関数」に取って代わられて以来、値…
ルルカの点描画 ニイチが少々変わっているのではないかということはルルカも当初から知っていたことだった。 それでもルルカは構わなかった。ルルカも自分自身が少なからず曲がってることを知っていたし、ニイチの性癖のようなものが捻れていようとも自分に…
「さかな、掬って」 「え?」 「さかな、する」 「金魚掬いたいの? 出来るかな」 「できる」 娘は巧妙に、八匹金魚を掬った。 お庭の鉢に水を張って、浮き草をいれて、放ったら、 ひらひらひらひら して きれい。 「お父さん、さかな」 「え?」 「小摘が呼…
こぼれ落ちる 夜。 冷蔵庫まで歩いていって水をのみ、私が少しこぼれて、冷蔵庫の前に残したままにしてしまった。 浴槽に浸かって音楽を聴きながら本を読み、私はゆるゆると湯のなかに流れていった。私はそれを残したまま、髪を洗い洗顔をした。私の気持ちも…
ただのnoteへのリンクですがしんどい(?)記事です。 と云いながらリンクはする。 こんな自分でも少しは生き延びたいんですよ。 note.com
友人(ネットはしない子の話。これは本当にそうなので、このブログを読んだ時点で、もしもあなたが何か思っても、あなたを中傷したいわけではないことは知って欲しい)の行為に多く「でもそれはしちゃ駄目だよ」という気持ちと(そう云ったらあなたは私を疎…
渚ちゃんは、ワインをかっくらう。帰宅したらささっと化粧を落として、フレッシュローソンで買った良い感じのチーズを齧りながら、ワインをのむ。グラスではなくて、麦茶をのむ為にあるようなガラスのコップでのむ。 渚ちゃんは泣かない。渚ちゃんは高円寺に…
Aはattention pleaseで、Bはbe careful──生徒がふたり並んで、先生が開いたカードの文字の英単語を先に云った方が勝ち。そういうゲーム。 yと私が接戦だった。何度カードを捲っても私たちは同時に答え、また引き分け、とクラスに笑いが起きた。 「じゃあ次…
理系生物クラスのsという子と当時仲が良くて、高校生になった頃から、大学生活の日々の相談まで、そのあいだ色々と話していた。彼女は生物クラスで私は物理クラス。だが、お互い高校では国公立理系ということで、数学の勉強は共に出来た。私は高校に入って…
影絵がすきなの。 ゆぅちゃんは云う。 きつね? うん、きつねもあるけど。ほかにも出来る。 「私、かに、出来る」 私たちは暗い部屋に居た。西日が射して、ゆぅちゃんが指を折り曲げて襖にかざした。 「はと」 「ほんとだ」 「白鳥」 「すごいね」 「オオカ…
滋養、というものが好きだった。滋味。食事というものは恐ろしい。彼女は体重の増加を恐れており、また栄養という概念も怖かった。栄養なのだから食べなさい、と云って引っ叩く手はもうここには無い。それでも。 愛情は出来ないと思った。愛情は恐ろしいし、…
また土曜日がやってきた。 金曜にワインをのんで、よく眠った私は、土曜の后後、掃除を始める。私は自分の部屋が好きだ。自分で設えたものたちが好きだ。 キッチンを磨く。ガスコンロ、シンク。洗濯したマルチクロスとベッドカヴァとシーツは既に物干し竿に…
友人が傘を買ったらしいので、 私も傘の購入を決めた。 Weil ich sie liebe 逢いたいものです。 カラフルアンブレラ 60cm ビニール傘 グラスファイバー 滑り止め付ジャンプ傘 LA-0001 (ピンク)メディア:
いつまでも笑つて見てゐるむすめではない 殴る程の甲斐が見へないので笑顔で無視してゐる そんな女です
ねえ、今日一緒に帰ろう。 ただの、そんなことが、怖かった。 お弁当をひとりで食べていることについて、何も動じていない筈だった。〝ぼっち〟という解りやすい痛みに心を仕立てる軽薄さを、見くだしている、筈だった。 中学校からバス停まで徒歩、バス停の…
「運を刺す針」 運針のお稽古。 うんしん、と云って伝わるのだろうか。「なみぬい」は分かる? やらないひとには分からないものよね。木綿の布を二枚合わせ、背筋を立てて、縫い目はほぼ三ミリ。縫い針が光る。 午後三時半をベルが鳴り、お茶にするから裏沼…
「アリスのドアだよ」 初めてその扉を見たとき、びっくりして私は云った。人間が入るには小さ過ぎるドア。私の身長は156cmくらいだが、この扉は90cmくらいではないだろうか。 鍵が掛かっていて、その上自分の身長では入れない。アリスが兎を追いかけていって…
赤いオーバーが良い。またはケープ。冬はそうでなくては。 『アンナの赤いオーバー』という絵本があって、むかし私は赤いコートを着ていた。叔母が着ていたものだ。物持ちの良過ぎる祖母に困惑したこともあるが、赤いコートは気に入っていた。アンナの赤いオ…
雲のなか泳ぎゆく。碧空に包まれながら、白いなびきをやわらかに追い掛ける。向きを変えて背泳をすれば、一面に空。その向こうに視えないけれど、きっと宇宙。闇のなか星々の海。 いつか見た変わった魚の泳ぎのように、ひゅうっ、ひゅうーっと蹴伸びで泳いで…
最初は「つくし」だった。次が「ことり」硬筆検定教室の話だ。先ず、ノートに「つ」を何度も書き、次は「く」を書いた。一角の平仮名が最初だったのだろう。次が二角の平仮名。つくし、そして、ことり。よく出来たものだと思う。 果物屋の娘はとてもきれいな…
おくるみを縫ったことが二度ある。ダブルガーゼの布製で、姪たちのものだ。もし冬だったなら極細ウールで編んでいただろう。考えると少しうっとりする。私は子を生まないが、手芸が好きだ。たぶん、乳児も幼児も好きだ。おくるみなんて手作りしても、ほんの…