text
おくるみを縫ったことが二度ある。ダブルガーゼの布製で、姪たちのものだ。もし冬だったなら極細ウールで編んでいただろう。考えると少しうっとりする。私は子を生まないが、手芸が好きだ。たぶん、乳児も幼児も好きだ。おくるみなんて手作りしても、ほんの…
知人の結婚式の帰り道、式のあと受け取った祝福の花を、道すがら川に投げ入れた。 たぷとぷと浮き沈みしながら花は濁った水のなか去ってゆき、その浮き沈みを見ていると私の過ごす日々のように感じてしまったが最後、川の薄い緑色の水が流れゆくことも今日鋏…
懐かしみのはなし。 KOOLはメンソールだって知らなかったけれど、あの頃の私だったらすぅすぅするものは吸えなかったと思う。今は、リップクリームがメンソレータムでちょっとイヤなすぅすぅがちょっとイヤだから好き、みたいなそういう感じです。でもメンソ…
「飾り窓のお姉さんを初めて見たのは、春だった」 T先生は紙束の一行めを声に出して読んで、あたまを抱える真似をした。 「また貴女はこんなことを書いて」 私は不登校の大学生で、T先生は私の通っていた、学生課併設のカウンセリングルームのセラピストだ…
文藝誌オートカクテル2020は、2020年前半に発行予定です。 text by h.
第五十八回のお題は「夢」です。正夢、夢中、夢想等、「夢」の入る言葉でもOKです。「夢」のある光景を作品にして下さい。概要→ https://t.co/PJh41DIrmYに沿って10/5日21時~24時に #Twitter300字ss と @Tw300ss をつけて投稿して下さい— Tw300字ss (@Tw300…
aikoの詩。(初回限定仕様盤 4CD+DVD)アーティスト: aiko出版社/メーカー: ポニーキャニオン発売日: 2019/06/05メディア: CDこの商品を含むブログを見るaikoの詩。(通常仕様盤 4CD)アーティスト: aiko出版社/メーカー: ポニーキャニオン発売日: 2019/06/05メ…
ひとが死んだので百合を携えて峠を超えたが、途中で陽炎が透明な棺を掲げて虹を渡ってゆくので、もう遅かったと思い、その百合は食べてしまった。 たぶん悲しかったのだ。だが、私はひとを愛せないであろうと知っているので、悲しかったなどということは無い…
幸せみたいなのは分からないけれど、好きと嫌いはあります。「私、イビツなの、好きです。好きだと思います」 「だからきみの小説にはクロチネさんしかいないんでしょう」 「そうかも知れません。でもそれが何か欠陥であるか、私は解らないんです」 「歪ゆが…
いつまでも笑つて見てゐるむすめではない 殴る程の甲斐が見へないので笑顔で無視してゐる そんな女です 20130421
Fは小テストも授業レポートも熱心に提出するところが印象的だった。 「すごい頑張るよね?」 尋ねた私に、Fは答えた。 「だって、薬科大の推薦取るから」 それは私には新鮮で、眩しい答えだった。 「君は京大受けてどうすんの」 「数学……」 私は数学が好き…
ぶざまに生きる 私はきちんと生きてもいないので、そんな体でぶざまに生きている実感を拒否するわけにはゆかない。それは事実なのでしょうがない。 ● 青春ノスタルジア 青春ノスタルジアアーティスト: さよならポニーテール出版社/メーカー: T-Palette Recor…
X「平成最後の夏ってみんなが騒ぐね」 Y「一部のひとが云うね。なんか良いことあるの?」 X「あれ、蝉っぽくない? なんか」 Y「蝉?」 X「騒いでるきみたちは今まで30年間土のなかにいたのかよ、っていうか」 Y「あはははは。だから今賑やかなのか。…
犬(webで犬と名乗っているので、犬と呼ぶしかない)という人物が作詞作曲をして、期間限定のバンドを組んで録音して解散しました、という話があって、そして白昼社(っていうのは私がやっている出版社です)の通信販売で今日から買えるようになりました。ジ…
夜はまださむい。 寝室は暖房機が入っているが、毛布のなかではつま先が凍えて縮こまる。 ストーヴのようなものの方が温まるのではないか、いや、アンカか。 子どもの頃、というより実家を出るまでよほど長じるまでベビィアンカというものを冬には蒲団に入れ…
愛することと感謝すること以外為すべきことは無いな、と思う。 と、同時に、 本当に性格悪いことしますね、と云われて「そうですね、それが何か?」と云ってしまう自分でいたいことがある。 人生は矛盾だなんて云う間抜けさでつけ入ることは出来ない。 自分…
日本海の海の色は濃いという。 という書籍にも載っているという文章を誉めるblogを読み、「海」の重複に対し賛賞されたりしていたが、 日本海は海の色が濃いという。 これでは駄目だろうか、と、思った。誤謬だろうか。「海」の重複よりも「の」の連続が気に…
ほろ苦い気持ちと あの、ほろ永い心細さ痛みが傷みでありそして悼みであることが。この揺らいでしまう私の肢体が あの頃合唱の列に並んでソプラノを歌っていたなんて 今では幻のようだ肢体が、死体になるまでの束の間 あの、ほろ永い、ふあんていこの島で、…
目を瞑ると沢山のひとの行列が目蓋のなかに浮かぶ。こわい。 設計図を引こう そして組み立てない
最終兵器彼女作者: 江良至,高橋しん出版社/メーカー: 小学館発売日: 2006/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (9件) を見る 読みました。漫画ありきでこれを読めば良いよなあと思いましたが…… 次は外伝を読みたいと思いました(…
いちご戦争模写 今日マチ子先生の漫画は、戦争を知らない世代が戦争漫画を描くことへの克己をくれた。知らない時代のことを書くのは(いや本当は少し知っている筈だ)私は本当は恐ろしかったのだ。私はまだ勇気が無くて自分の絵や文章の人間でそれを表せず、…
1945年、長崎市への原爆投下により、人口推定24万人中うち役7万4000人の死亡。およそ三分の一だ。 考えてみる。私と、友人と、友人がここにいるとして、ひとりは死ぬ。ひとりは恐らく重症。私ももしかしたら怪我を負う。 一気にリアリティが押し寄せる。 3人…
原爆ドームのことを、きれいな形だと思っていた私がいた 被曝についてよく知らなかった小さな頃だ ドーム型、(元々はそうであったであろう)洒落たシルエット、そして廃墟的な部分を。 その後年齢を重ねて、原子爆弾や戦争について本を読んだが 原爆ドーム…
詩と小説と絵と歌のことを考えて過ごす、過ごしている それらは組み合わさっている、また、歌の詞は詩に単語が似ているので 詩のことを考えている、と云うと大体が纏まる 常に考えている それは私が公共の職に就いていないからなのかというと 職業人である私…
福島と福岡を間違える友が高校時代には二人いた (馬場めぐみ「if」より(短歌研究2017年3月号) if ......だったら、「福島と福岡を間違える」友人が今も二人もいたんだろう、という、 短歌研究 2017年 03 月号 [雑誌]出版社/メーカー: 短歌研究社発売日: 2…
うっすら光る遠い途 -Mathmatic Mathmagic- 努力をしない生徒だった。この出だしを書いてから暫し努力という言葉が何を意味するのかも判らず、ゲシュタルト崩壊するしか無いほどに努力をしない生徒だった。私にとっての努力とは往々にして暗記だ。自然に記憶…
『夢のなかの庭』 うっすらと、うっすらと、目を細めて心で見たら君の背中の向こうに見える、黒い翼の欲望と、白い輝きの神様。 あのこに近づかないで。 僕は声を上げようとして、それなのに金縛りの躯、ゼリィになった空気が連綿と続く。苦しい、苦しいんだ…
壊れた玩具を手にしてあの子が泣いている。あの子たちが泣いている。頬に一粒の水。今日は土砂降り。嘘つきの空。泣いてなんかいない。嘘つきの私たち。嘘つきの僕たち。そして僕たちの壊れた玩具。 おとなのような大きさのものが近づいてくるので金切り声を…
【第101回フリーワンライ】本日のお題冷たい方程式サヨナラと手作りご飯は残さず食べなさい 冷めた茶のように割れたガラスの上この中から一つ以上選んで執筆してください!22:30より開始です! #深夜の真剣文字書き60分一本勝負— フリーワンライ企画@次回7/9…