遊書部
--My Sample Book-- この町に越してきてから、おそらく二年ほどになる。「街」という表記よりは「町」である。「町」には、最初は参った気分にさせられた。私は前は割合に様々な便の良い場所に家を借りていたので、この、スーパーマーケットが一軒ある他はや…
--a primitive talk about tangent-- 彼は最初は几帳面な性格であるように見える。彼のイラストを最初に目にしたときの均整の取れた線の配置や非常に精巧な感じからして、てっきりそうなのだと思っていた。しかしやがて私は知る。彼のイラストは、ペンタブレ…
「交錯するねー」 彼女が云った。何を工作するのか、と僕はかおをあげた。もう4時半だぞ。朝ってやつだぞ。彼女は僕があまり反応しないからか、再度云った。独り言のように。僕が返事をしなくても哀しくならない程度のトーンの独り言専用の声を作って。 「…
私はその日、人生で初めて冷凍みかんを手にした。至極普通に長年生きてきたのにも関わらず、私はこれまで、それを直に見ることが無かったのである。 小説の作中で誰かが旅に出て列車に乗るというような段取りになると、大抵はこの「冷凍みかん」という単語が…
今晩は、87年前の世界の皆さん。落ち込んだりもしていないけれど、私はそれなりに元気です。夏到来ですが空調はつけておりません。節電なる日々です。 「エアコンを……」とよく耳にしますが、私は大概に於いては「冷暖房を切って」と申します。「空調」は少し…