ルルカの点描画
ニイチが少々変わっているのではないかということはルルカも当初から知っていたことだった。
それでもルルカは構わなかった。ルルカも自分自身が少なからず曲がってることを知っていたし、ニイチの性癖のようなものが捻れていようとも自分にとって良いことだろうと、ルルカは考え、そして納得していた。なんの恐れも無い。彼は優しい恋人だ。
大抵はニイチがルルカの部屋に泊まった。ルルカは自分のベッドの方が好きだからだ。ときどきニイチはルルカの首をなぞり、
「ルルカは美人だね」
と、子どもの頭を撫で回すように、云う。
「こんな痣、どうしたの?」
ルルカの左肩胛骨に指先でそっと触れて尋ねた。その指はまるで、その痣が出来立ての傷口で、ルルカが痛みを覚えるのを回避しようとするように慎重だった。
え、痣、ある?
あるよ。ちょっと青くてそれでちょっと緑でそれからちょっと黄色い。怪我?
なにそれ、何色なのかわかんないよ。
ルルカはくすくすシーツの上で笑う。
怪我じゃないよ。知らないけど、生まれつきじゃないかなあ。
触っても痛くない?
全然、全然痛くないよ。ていうか何色?
目立つ?
そうかあ、とニイチは云う。そうだねえ、宇宙みたいな色。宇宙とか見たことないでしょ。夜の空の黒くないところの色。なにそれ、何処。星が光っているから、空の黒が少し負けてる、あれ。よくわかんないよ。そう? 全く分かりませんよー。
ニイチはベッドから手を伸ばしてルルカのデスクのペンを取った。
※ note創作大賞に応募しました。この小説を含む本は下記です。