「運を刺す針」
運針のお稽古。
うんしん、と云って伝わるのだろうか。「なみぬい」は分かる? やらないひとには分からないものよね。木綿の布を二枚合わせ、背筋を立てて、縫い目はほぼ三ミリ。縫い針が光る。
午後三時半をベルが鳴り、お茶にするから裏沼のあの子を連れてきて。
赤い糸で運針した布を、先生が点検している。
裏沼のあの子には白湯を出すの。そうなの。そういう体質なの。
あなたは珈琲をあげましょう。ミルヒを多く入れるのよ。濃い珈琲ばかりのむと、あなたも背が伸びなくなるわ。
他に誰が?
あなた(も)って誰が?
知りませんよ。
運針は上出来ですね。一目一目に願掛けをするような、そんな真似だけはしないでちょうだいね。
(300字)
(Twitter300SSお題「運」20210206)