Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

「おはなしのドア」

「アリスのドアだよ」
 初めてその扉を見たとき、びっくりして私は云った。人間が入るには小さ過ぎるドア。私の身長は156cmくらいだが、この扉は90cmくらいではないだろうか。
 鍵が掛かっていて、その上自分の身長では入れない。アリスが兎を追いかけていってそれから落下、そして鍵の掛かった小さな扉がある、それはもう定説(私にとっては)で、定説というか、もうそれは、歴史上のことと云ってもいい。私だけの歴史だ。否定されても苦笑されても仕方が無い。
 しかしながら、そのドアをみつけたのは……ここで60%くらいの現実味が増すのだが……ファストフードの店の壁だった。私と彼は、さっきその店のプラスティックめいた椅子で、ハンバーガなんかを食べてフライドポテトも平らげ、グリーンサラダにプラスティックのフォークを突き刺し、それから私はソフトクリームを食べたいのが常なので、いつも通りにソフトクリームもしっかり制覇した。ハンバーガを食べてみつけたアリスのドアですか。落下しなかったなあ~。や、したのかな。していないと思うのだけれど、私は私についての信憑性を確立出来ない自我しかない性質なので、おおいに疑っても良いのだが、いや……落下はしていない……もう30%くらい現実味が加算された……そうか、アリスの扉の方から率先して私のところに来てくれたわけか。良い性格のドアなんだね。まあ鍵は掛かっているにしても。
「ねえ! アリスのドアだってば」
 私は彼の注意をドアに向けるためにまた云った。彼は一瞥し、そして云った。
「掃除用具入れだね」
 掃除用具入れ?
 私の90%まで上昇していた現実味数値は一気に下がった。
「そんなことないよ」
「なんで? これは掃除用具入れだよ」
 ひどい。非道だ。そんなこと信じない。

 その後も私はファストフードを食べにいくときはいつもその小さな……開けると掃除用具が入っているという説もある……ドアを見て、「アリスのドアだ」と呟いくことにしている。彼はもう何も云わない。そたぶん彼は、ルイス・キャロルに心酔したことが無いのだ。閉店したあとはここを兎が駆けてゆき、Eat me.と小さなケーキに書いてあるのだよ。24時間営業って書いてあるけれど、そんなこと気にしないの。私は気にしない。


        



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