「飾り窓のお姉さんを初めて見たのは、春だった」
T先生は紙束の一行めを声に出して読んで、あたまを抱える真似をした。
「また貴女はこんなことを書いて」
私は不登校の大学生で、T先生は私の通っていた、学生課併設のカウンセリングルームのセラピストだった。私は週に一度、T先生の面接を受ける。
講義に殆ど出られなくなっても、面接の為には登校した。私は当時それまで書いた短篇たちを纏めて印刷してみていた。小説を書く人間として生きるのかどうか、未だ分からなかった。
アムステルダムの飾り窓のことは、そのとき私は知らなかった。無知だったのだ。先生は私を買い被っていたのではないか。
あの頃面接の一時間が、私の心の拠り所だった。
第五十九回のお題は「窓」です。天窓、窓際、窓口等、「窓」の入る言葉、比喩的表現でもOKです。「窓」のある光景を作品にして下さい。概要→ https://t.co/PJh41DIrmY
— Tw300字ss (@Tw300ss) October 26, 2019
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