爪を磨く。鑢で形を整え、色を塗りフレンチネイルにトップコートを重ね、私の爪は歪んだ宝石になる。
爪が嫌いだ。薄く入り込む汚れ。男を抱くとき何処かで私の爪が男の肌を傷めないか気に掛けねばならないその邪魔臭さ。すべては爪の所為だ。
男の恋人は綺麗な卵形の爪をしている。「爪切りは使わない方がいいのよ」そう云った彼女に私は従っている。男は関係しているとは云えるが恋人や彼氏とは呼べない。幾ら彼に絡みついても。私の爪が邪魔をする。
ベッドのうえでひとり、ふいにおぞましさが達し、それを肌に突き立てた。刺し入る痛みに涙が滲んだ。
爪を噛む爪引き千切る爪を折る
でも爪で傷つけたい身体
もちろん気付いてるんでしょう。爪で私を支配した気にならないで、ネイルサロンの女。
とは思うものの、私は私が私。
どうしたいんだろう。本当に傷をつけたら、冷めてしまう。きっと。
私、支配されていたいのかも。自分で自分を制御できないから。ゆるして。
たすけて。