扉を開いたら愛しい彼女が目に入り、私たちは真っ先に接吻と抱擁を交わした。
彼女が来ているとは、ほんの少し想像しつつも、約束はしていなかったので、私は多幸感に浮いて彼女の肩に頬を寄せた。きみが来ているのなら、私はもっともっと一番上等の恰好をして来たかったな。ばたばたと出てきてしまったの。化粧もしていないしスカートもくしゃくしゃしている。きみはいつも通り綺麗で、Moscow muleをのんでいる。私は先ずはウオッカをのんだ。今日のライヴはノーチャージであるので、沢山のむ。
「ブラックジンジャーって何かな?」
と云いながらウオッカを呑み干し、カウンタでそれを頼むと、それはウィルキンソンのドライジンジャエールに更に生姜の擦り下ろしを混ぜたのみものだった。生姜はおとなになったときから、美味しくなった、ジンジャエールも。
その日は歌を聴きにきたのだった。
ギターを抱えた市村マサミさんはトリで、そのうえアンコールに応えてもう一曲歌ってくれた。
市村さんは恰好良い方。