Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

「雨期の晴れ間」

 一週間くらい雨の日が続いた、ような気がする。雨が降ると、どうしてか人と会う機会が減る。減るというか、ほとんど人と会わなくなる。それは僕のせいではないし、別に誰のせいでもなくて多分。多分、カラクリ。そんなカラクリの中で生きている、ちっぽけだな。と思う、カーテンを開ける。開けると雲の切れ間に太陽があって、うれしくなって外に出る。そのとき僕は、太陽を見たら言いたいと思っていたこと。ずっと思っていたのに、ぜんぜん思い出せないでいた。


  ぽかぽかとぽかんぽかんは似ているね
  天気も言葉もカラクリだよね


 晴れたら外に出るさ、と部屋に留まるうちに雨風が止み、 陽射しが色づき、そしてきみからメッセージ「晴れたし、会おうよ」上手に否定する僕が欲しくなる、ぽかんとぜんぶを見開いても良いような、それは春の日。「会ったら言いたいことがあるから」それは本当?
 久々のきみは肝要なこともなく、珈琲を片手に、総てがうららかで、ぽかぽかするね、って僕は云う。いつ云った? 一昨日云った? いつ出掛けたのかが思い出せない。
 ただ分かるのは、メッセージなんてカラクリでしかなくて、うん、会いたいかな、また会いたいと思うよ。どうして今日は出掛けないのかな。やがて春の雨が降り始め、僕はまたカーテンをぴったりと閉じていて。



(「雨期の晴れ間」カリフォルニア檸檬×泉由良)





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