Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

『桜になりたいいっぱい』

  

     
 ねえ、今日一緒に帰ろう。

 ただの、そんなことが、怖かった。

 お弁当をひとりで食べていることについて、何も動じていない筈だった。〝ぼっち〟という解りやすい痛みに心を仕立てる軽薄さを、見くだしている、筈だった。
 中学校からバス停まで徒歩、バス停のあちらこちらで、言葉を交わす同じ中学の生徒たち。俯くわたし。
      
 
 夜。
     
 ふいに涙があふれた。
 誰も一緒に帰ってくれない。いつだってそうだった、小学校のときからおんなじだ。だから全然悲しくない。帰り道は花を摘んで本を読んで空を見て、だから淋しくない、なんにも悲しくない。
 新年度はいつも胸がくるしい。新緑の臭いはカルキに似ていて嫌い。帰り道はひとり。


      

 


      

     



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