題詠5首
1. 透
2. ホイップ
3. 果
4. ペンギン
5. 短夜
テーマ詠
「あつい」
『undo』から岩井俊二作品に入った私にとって、13歳かそれくらいの当時憧れの作品だった『打ち上げ花火、横から見るか、下から見るか』をレンタルヴィデヲで借りてきたときは、正直な感想、典道(山崎裕太)を振り回すなずな(奥菜恵)の思わせぶりなところや大人びたところやそれでいて儚げなところに少々苛立った。同年代だったからかも知れない。それは同じ少女として、スクリーンの向こう側のヒロインに対して素直に感嘆を抱けない状態だった。つまりなずなは「イヤな女の子」だったのだ。当時の私にとって。
それでもエンディングテーマが流れ出した瞬間、目から涙が滝のように流れ出したのだった。
hold me like a friend
kiss me like a friend
そう、典道*1もなずなも「フレンド」、決して恋人にはならない「フレンド」同士の小学生のある日の世界。
あのヴィデヲを観て号泣した日、私は「感情量」という単語を実感を以って知ったのだと思う。
今、30歳を超えて見れば、なずなはやっぱり生意気で、思わせぶりなくせに儚くて、それは男性監督の作る理想のヒロイン像らしさに溢れていて、それがちょっと嫌でくやしいけれど可愛い。とても可愛い。そしてこの話の切なさを、今は邪魔っけな嫉妬抜きで観ることが出来る。少年たちは、花火を横から見たかった。本当はそういう夏の日の、そんなノスタルジアだけの結晶になれたら、知れたら、それで良かったのだと思う。
アニメ化が同じ主題歌なのは嬉しいことだ。
アニメ予告編のなずなちゃんはちょっと色っぽいところがあって、確かにそれがなずななんだけど、でも小さな鏡に向かって紅を引いて、
「どう? 16歳に見える?」
と云った奥菜恵の少女時代にはどんな絵も叶わない気がした。だからアニメだけ観たひとは実写版も観たらいいなあと思う。
書籍は読もうと思って注文した。私も2017年にならないといけないなあとか思ったりした。私のゼロ年代はぼーっとしていたら通り過ぎてしまって、今はよく判らないところに立っている気がする。
「家出?」
「家出じゃないわよ。駆け落ち」
「……死ぬの?」
「それは心中でしょ」
(中略)
「心配しないでも私が養ってあげるから」
よく憶えている。
尼崎文学だらけがあるので、再掲しておきます。
彩村菊乃さんの『月光浴』を先日読みました。
表紙がキラキラ金色に光ってとっても綺麗なんです!素敵!
ひらのみやこさんの魅力的な画も収録された歌集です。
砂糖菓子降りつもるよにかなしみはあまくきよらにつのるのでしょう
例えば泣いているときに、「泣かないで」と云われるのは私はあまり好きではないこと。だってそんなことを云われたって、それで泣き止むことは殆ど出来ないから。この歌集は、月が泣いてもいいよ、涙、あまいね、と云ってくれるような心地がして、それが優しく好きだと思いました。悲しまないで、と云われるよりも、かなしいよね、と云われることの方が救われるときがあるということ。
彩村さんは「キスとレモネード」というサークルで活動していらっしゃいます。「きみの胸をずきずきさせたい」という、なんて素敵なフレーズ。
最近はTumblrにて随筆を書かれていて、楽しみにしています。
尼崎文学だらけ〜夏祭り〜に彩村菊乃さんも出店されます。
電子書籍(Amazon・kindle)を発行したのでお知らせしておきます。
本当はこちらのブログに書くので良いことなのですが、自分の好きな本でもあるのでここにも記しておきます。
どちらも「本を書きたい」という意気込みと情熱を込めて書かれているので、その点が私にとってとてもいとしい本です。よかったら読んでください。
私(泉)の本は、中学校内文集に選ばれた短篇と高校校内文集に選ばれた短篇から、大学で戯曲化した短篇、大学時代に私家版を作った短篇を含んだものを、後半(大学時代の分)少々改訂しました。冨田風子氏に絵を描いて貰えた絵があるので、私はやっていけます。
はてなブログ「短歌の目」6月分です。
1)クリーム
未だクリーム嘗めたることのないやふな澄んだ曹達に瞳隠れり
2)溝
哀しくもなき日溝口のぬめりを擦るまなこの平たさのまま
3)万緑
晴れし日の水面に映る万緑が光に毀れ吾が目を死なす
4)雨
雨ならよかつた心は泪 雨のなか泣いてゐたなら気づかれなかつた
5)きみ
寒き日もきみはきみの眼をしてくれ そんな願ひを持て余したり
コーデュロイをコール天と呼び慣らふ祖母の縫ひたるジャンパスカート
真夜中に寝間着の裾を弄ぶサテンのタグの滑らかな白
スカートの蔭に隠れて心おきなく溜息の音が聞ゆる
何枚の服をトランクに詰まば吾が安穏は満たされうるか
衣服ごと一度燃やしてみたならば空が吾が身を包むだらうよ
5月に参加した記事はこちら。
最近のやばい本。
(追記)
BRUTUS特別編集 合本・珍奇植物 (マガジンハウスムック)