『undo』から岩井俊二作品に入った私にとって、13歳かそれくらいの当時憧れの作品だった『打ち上げ花火、横から見るか、下から見るか』をレンタルヴィデヲで借りてきたときは、正直な感想、典道(山崎裕太)を振り回すなずな(奥菜恵)の思わせぶりなところや大人びたところやそれでいて儚げなところに少々苛立った。同年代だったからかも知れない。それは同じ少女として、スクリーンの向こう側のヒロインに対して素直に感嘆を抱けない状態だった。つまりなずなは「イヤな女の子」だったのだ。当時の私にとって。
それでもエンディングテーマが流れ出した瞬間、目から涙が滝のように流れ出したのだった。
hold me like a friend
kiss me like a friend
そう、典道*1もなずなも「フレンド」、決して恋人にはならない「フレンド」同士の小学生のある日の世界。
あのヴィデヲを観て号泣した日、私は「感情量」という単語を実感を以って知ったのだと思う。
今、30歳を超えて見れば、なずなはやっぱり生意気で、思わせぶりなくせに儚くて、それは男性監督の作る理想のヒロイン像らしさに溢れていて、それがちょっと嫌でくやしいけれど可愛い。とても可愛い。そしてこの話の切なさを、今は邪魔っけな嫉妬抜きで観ることが出来る。少年たちは、花火を横から見たかった。本当はそういう夏の日の、そんなノスタルジアだけの結晶になれたら、知れたら、それで良かったのだと思う。
アニメ化が同じ主題歌なのは嬉しいことだ。
アニメ予告編のなずなちゃんはちょっと色っぽいところがあって、確かにそれがなずななんだけど、でも小さな鏡に向かって紅を引いて、
「どう? 16歳に見える?」
と云った奥菜恵の少女時代にはどんな絵も叶わない気がした。だからアニメだけ観たひとは実写版も観たらいいなあと思う。
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書籍は読もうと思って注文した。私も2017年にならないといけないなあとか思ったりした。私のゼロ年代はぼーっとしていたら通り過ぎてしまって、今はよく判らないところに立っている気がする。
「家出?」
「家出じゃないわよ。駆け落ち」
「……死ぬの?」
「それは心中でしょ」
(中略)
「心配しないでも私が養ってあげるから」
よく憶えている。