Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

『リアルレアリズム宣言』ほか

 オカワダアキナ氏、ひのはらみめい氏と泉由良で、9月の文学フリマ大阪の際に合同誌を作り、それを電子書籍化したものを発行しました。折角なので、その3人が参加しているラブホテルアンソロジー『満室になる前に』(ひざのうらはやお主宰・ごうがふかいなHD)から3人分抜き書きした電子書籍も作りました。よかったらちらっと読んでくださいませ。

 

リアルレアリズム宣言

リアルレアリズム宣言

満室になる前に -ミッドナイト-

満室になる前に -ミッドナイト-


 AmazonのkindleUnlimited対応書籍です。

   
 電子書籍スマートフォンやPC、Mac、それから勿論kindle専用端末で読むことが出来ます。kindle端末持ってないから買わない、っていう声を今もちらほら聞きますが、iPhoneiPad)やAndroidでも軽々と持ち運べる読書です。



      
     

記憶は孤独・貰い煙草しかしなかった

 懐かしみのはなし。
 KOOLはメンソールだって知らなかったけれど、あの頃の私だったらすぅすぅするものは吸えなかったと思う。今は、リップクリームがメンソレータムでちょっとイヤなすぅすぅがちょっとイヤだから好き、みたいなそういう感じです。でもメンソール煙草は吸えないかも。

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 マイルドセブンメビウスに名前を変えてしまったとき、私はたぶん国外にいたのだと思うけれど、とても寂しかった。マイセン何ミリ買ってきますか! と調達するのがむかしの私だった。美学の先生の口からマイセンを取り上げて、三口ほど吸ってまた口に返すこともときどきやっていて、でも先生は全然恋仲とかではなく既婚者でありしかし間接キスと騒ぐほどでもないほど、私の存在はただのちっぽけな娘っこだったので、よくそういうことをした。何度か何処かに書いているが、メビウスっていうのは禁煙出来なさそうになってしまう命名で、それはどうだろう。

    
 セブンスターを吸っていた女の子はそれを「セッタ」と呼んでいた。それを恰好良いと思った。私の何処かで、それは「雪駄」と無意識のうちに掛け言葉になっていて、ゼロ年代二十歳前半夏の雪駄は、どう考えてもハードボイルドに繋がって、たまに少年みたいに髪を切ってしまう全然ダサいところのない女の子が吸っていると、だからセブンスター(というかセッタ)はハードボイルドだと思ってしまう。吸わせて貰ったときは、灰が多いんだな! と思って、そんな感想では申し訳ないので、それ以後ねだらなかった。

 KOOL NIGHTSを好きな子はKOOL NIGHTSはなかなか手に入らないと云って、本当はPALL MALLを吸っていた。それはときどき貰った。思い出せないけれどときどき貰うくらいだから美味しかったのだろうと思う。おしゃれさんだと思った。アニメの好きな子に話すと、「次元大介の吸っている奴ペルメル!」と目を輝かせたけれど、私は『ルパン3世』は観ないので分からない。あの子はKOOL NIGHTSの、その入手しにくい箱を私にくれたので嬉しかった。

 京都から尼崎に出奔したあと、私が京都に帰れなくなってしまった為、京都の家を大体は母が片付けてくれた。(ロングロングヘアをざんぎりに斬った髪も放置して出ていったので、恐ろしかっただろうし、とても申し訳ない)出奔したは良いが直後に酷いパニック障害になって、京都に帰れなくなっていたので。母はたぶん卓の抽斗の、KOOL NIGHTSの空箱を棄ててしまったと思う。掃除に参加しなかったから仕方がないのだけれど、惜しい。


 さみしくて、むかしむかしの、その子のブログから拝借してきたKOOL NGHITSの画像を貼ってしまう。
 Macを何世代替えても、残し続けている画像。私が煙草の魔法使いだったら、あの子に、手に入りにくいというKOOL NIGHTSをいっぱい渡してあげたかった。あの子は私のknightだったから。

    


     

    

読書(短篇数本)

無限大ガール (Kindle Single)

無限大ガール (Kindle Single)

最後は臼が笑う (Kindle Single)

最後は臼が笑う (Kindle Single)

マリーの愛の証明 (Kindle Single)

マリーの愛の証明 (Kindle Single)

    

 Kindle Singleシリーズと銘打たれた短篇群を読みました。最初4作は、うーんまあ、まあ、という感想ですが、読書なんて食事と同じだからまあまあの食事の日もあるし全然問題は無いのだった。でも今日読んだSingleシリーズよりも面白い短篇を書ける人間は私も含めて沢山居るので、雇って欲しいぞ、と思いました。
 『シャンデリア』はとても良かったです。これは、大抵では書けないと思ったので、前言は半分撤回します。哀しくて痛くて綺麗でとてもよかった。

「『春眠』の頃」

      
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「飾り窓のお姉さんを初めて見たのは、春だった」
 T先生は紙束の一行めを声に出して読んで、あたまを抱える真似をした。
「また貴女はこんなことを書いて」
 私は不登校の大学生で、T先生は私の通っていた、学生課併設のカウンセリングルームのセラピストだった。私は週に一度、T先生の面接を受ける。
 講義に殆ど出られなくなっても、面接の為には登校した。私は当時それまで書いた短篇たちを纏めて印刷してみていた。小説を書く人間として生きるのかどうか、未だ分からなかった。
 アムステルダムの飾り窓のことは、そのとき私は知らなかった。無知だったのだ。先生は私を買い被っていたのではないか。
 あの頃面接の一時間が、私の心の拠り所だった。



 

11月短歌誌

 

歌壇 2019年 11 月号 [雑誌]

歌壇 2019年 11 月号 [雑誌]

 『短歌』掲載の藪内亮輔氏の競作用の連作が挑戦的、と云えば良いのか。刺戟的。
 『短歌研究』に馬場めぐみ氏。友人が載っているとやっぱり嬉しい。満を持しての「BUMP OF CHICKEN」という連作でした。

   



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