今日は昔教わった。昔を知って昔を思い出した。
随分昔たった1日でお前たちの手で十五万三千三百七体の屍体が川のそばに積み上げられた。
その日この土地からは時間が奪われた。
俺からは言葉が奪われた。
昔、命と時間と言葉が奪われた。今日は腹を切ってもただでは死なぬ。死んでも老いて腐って融けてか黒き燃える水になる。
一ヶ月しか経っていないのよ。あれから。
どうしてガムを噛めるの。コーラを飲めるの。ハンバーガーを食べられるの?
この恨みにも時効があるの?
人はいつか忘れてしまうの?
原爆を落とされた日のことを。
その翌日歩いたその町を?(富士は電話機を取り上げて、神様に電話をかける)
もしもし、もしもーし。
天国があるというのなら、なぜあの世に作るの?この世にないの?
どうして天国が今ではなくて、アフターなの?
それを教えてくれたら、信じてもいいよ。あなたのことを。ごめんなさい。嘘ついた。
ほんとは、助けがほしいの。あなたの。
聞こえていたら返事して! 神様!
- 作者: 野田秀樹
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