Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

こゝろ

こゝろ


あなたはあなたの狙いの為になら
わたしを疎んじるようになり
わたしはそれがかなしくて泣き過ごした
あなたはわたしに言葉を届けなくなり
わたしたちのあいだに線を引き
わたしは神経を削り手首を戯れ程度に傷つける

にんげんへの執着
醜いのに投げられない汚物
愛情と呼べないのに
手離せない卑屈
また逢いたいです
また、逢ってください
あの頃の日々のように再び
わたしの瞳を覗いて欲しい
その慾が、執心が、恋しさが、

消せない

愛ではないのに

きたない

勝手に痛い痛いと声に出さず叫ぶ
あなたが好き、若しくは
好きだった

今はわからない
別離など知らなかったかのような
過去のなかにだけ住んでいたい
精神は弱く
とても恥ずかしい

日々はまた過ぎる

水辺へ往きたい


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永遠に愛するものなど無い、(愛するは可能形では発音出来ない)

 ひとが死んだので百合を携えて峠を越えたが、途中で陽炎が透明な棺を掲げて虹を渡ってゆくので、もう遅かったと思い、その百合は食べてしまった。
 たぶん悲しかったのだ。だが、私はひとを愛せないであろうと知っているので、悲しかったなどということは無いのだ。何度も云うように、世界で大切なものは分子、電子、核子である──この思想は不変である。愛しきものが私の愛を奪い取って男を選んできた日々からして変わらない──。

 死んだ友人が大切だった。
 しかし、ひとを大切に想うということが私には恐ろしい。
 路傍に座って抱えていた百合を口に入れた。植物のあじは慣れないもので、咽せるような花粉と百合の吐く蜜、吐き気を抑えて口に手を当てる。
 彼女のスウィートピーが大切だった。
 しかし、ひとを大切に想うということが私には恐ろしい。
 彼女がもう歳をとれない誕生日には、スウィートピーを食べよう。
 花に噎せこみながら決める。
 死んだひとに捧げたいものに、一種の物欲を混ぜないこと。
 死んだひとを永遠に愛することが私には恐ろしいので、私は墓に置く花を捜して、光を捜して、死んだあとまで。

 
 
 
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『一九八四年』

 

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 読了。
 「支配する/されている」とはどういう概念で捉えられるかということを考えた。kindleで読むとトマス・ピンチョンの解説が未収録なので後日紙書籍で読む予定。家人に借りて読みました。赤狩りの時代に出版されていたのですね。

    

prototype #

 幸せみたいなのは分からないけれど、好きと嫌いはあります。

「私、イビツなの、好きです。好きだと思います」
「だからきみの小説にはクロチネさんしかいないんでしょう」
「そうかも知れません。でもそれが何か欠陥であるか、私は解らないんです」
ゆがんでいて?」
ひずんでいて」
「好き?」
「どうして壊してしまうんでしょう。すごく好きだと思ったのに」
「無意味な反復運動をする癖があるね、きみは」
「それは昔からです。鑢が好きですね」
「鑢で歪にしているのは、可笑しいね」
「結局可笑しいと思うしかないです」

 幸せみたいなのは分からないけれど、好きと嫌いはあります。


 Ende.

    

(再録)   


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