Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

『人間椅子』

  #ブンゴウメール8月。夕刻には毎日『人間椅子』が一節送られてくる。ので、先に青空文庫で読んでしまう。
 タイトル通りの小説だが、そう云えば「作家の元に」(それは著者をモデルにした人物だったり、ただ作家である主人公だったり)の元に素人から原稿が送られてきて、更には億劫だと思ったり、または何故か手に取ってしまったりとしてその原稿を読んでしまい、
 つまりその原稿が小説の内容であり、作家の日常に戻って世界が終わる、という短篇は或る時代に多いな、と思った。今ふと思い出したのは『トカトントン』です。

 

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)


  #ブンゴウメール 8月は『押絵と旅する男』が朝、『人間椅子』が夕刻に一節送られてくる。メール差出人が「江戸川乱歩」とされていたり、凝っている。(先月は芥川龍之介からメールが届き続けた)
 bungomail.notsobad.jp
 ここのところは、何月はこの作品だな、と知ると先ずは青空文庫で読み終えてしまうことになっているけれど、魅力的なサーヴィス。


   

『人間の大地』

 

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

人間の大地 (光文社古典新訳文庫)

人間の大地 (光文社古典新訳文庫)


    
 『夜間飛行』は飛行機に乗ることについての本だ。『星の王子さま』は「大切なもの」についての無垢な本だ。
 『人間の大地』は人間が地を這って在るということについて、人間が在るということについてその儚さと、尊いと云って良いのかも判らない、存在ということについての単純な、うつくしい原理について書かれた本だ。と、思った。

 

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)


 サン=テクジュペリ再読期間を設けて良かった。

   

『夜間飛行』

 

夜間飛行 (新潮文庫)

夜間飛行 (新潮文庫)

人間の大地 (光文社古典新訳文庫)

人間の大地 (光文社古典新訳文庫)


 最初にこの本を捲り始めたとき、戦闘の為の飛行機に乗る操縦士の本だと勘違いしていたことを思い出す。というのもこんなに命懸けになって、死人を出して、郵便を届けなければならないとなど思いついていなかったのだ。空を飛ぶということは極限状況だ。もしかしたら宇宙ロケットよりもギリギリかも知れない。NASAの方が念には念を入れてくれそうである。
 解説を読んで、この小説の設計度の高さが強靭であることに初めて注視し、驚いた。サン=テクジュペリのことを私は一種の感性に生きたパイロットのように誤解している。もっと丹念で緻密な操縦士であり、作家であり、フランス人だ。

   


    

川上弘美『風花』抜き書き

風花 (集英社文庫 か)

風花 (集英社文庫 か)


  

「今の世の中、あたしたちを拘束するなんていう、責任っぽいこと、誰もしてくれないのよ」
(p.137)

 私いつも、ここにいない人のことを、ちょっとだけ、思う癖がある。(p.173)

 みっともないことなんだな。他人と共にやってゆこうと努力することって。(p.183)

 どのような陰翳をもつ「ああ」なのか、自分でもよくわからぬまま。(p.192)

 人の中にいても、いつも自分の爪の先をこっそり擦っているような感じのひとだと(後略 p.254)

「あるはずのないものなのに、そこにあることがものすごくしっくりきていたから」(p.260)

“死んだらおしまい”
(作中、温泉宿・風呂場にあった落書きのようなもの)


    



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