- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 2005/02/23
- メディア: DVD
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『夜間飛行』は飛行機に乗ることについての本だ。『星の王子さま』は「大切なもの」についての無垢な本だ。
『人間の大地』は人間が地を這って在るということについて、人間が在るということについてその儚さと、尊いと云って良いのかも判らない、存在ということについての単純な、うつくしい原理について書かれた本だ。と、思った。
サン=テクジュペリ再読期間を設けて良かった。
最初にこの本を捲り始めたとき、戦闘の為の飛行機に乗る操縦士の本だと勘違いしていたことを思い出す。というのもこんなに命懸けになって、死人を出して、郵便を届けなければならないとなど思いついていなかったのだ。空を飛ぶということは極限状況だ。もしかしたら宇宙ロケットよりもギリギリかも知れない。NASAの方が念には念を入れてくれそうである。
解説を読んで、この小説の設計度の高さが強靭であることに初めて注視し、驚いた。サン=テクジュペリのことを私は一種の感性に生きたパイロットのように誤解している。もっと丹念で緻密な操縦士であり、作家であり、フランス人だ。
「今の世の中、あたしたちを拘束するなんていう、責任っぽいこと、誰もしてくれないのよ」
(p.137)
私いつも、ここにいない人のことを、ちょっとだけ、思う癖がある。(p.173)
みっともないことなんだな。他人と共にやってゆこうと努力することって。(p.183)
どのような陰翳をもつ「ああ」なのか、自分でもよくわからぬまま。(p.192)
人の中にいても、いつも自分の爪の先をこっそり擦っているような感じのひとだと(後略 p.254)
「あるはずのないものなのに、そこにあることがものすごくしっくりきていたから」(p.260)
“死んだらおしまい”
(作中、温泉宿・風呂場にあった落書きのようなもの)
手脚のような長いものが4本付いたぶかぶかした袋に、生ぬるい水がだぶだぶと入っているような心持ちがいつも何処かにある。そのがぶがぶしたただの袋が私で、ベッドのうえでぐんにゃりしている。職は無い、子育てはしない、家事もわりとしない。愛情の正しさのある持ち方が解らない。私が何も無い。希死念慮は云わないの私の約束。けれどとても悲しい。美しく生きろという発言をする勇気のレヴェルから這い上がらなければいつまでも生臭い水袋のままだぶだぶしているだろう。脱出したいけれど、ただ、光が見えない。大好きなひとがいっぱい居るのに、この希みの無さは何故なのか分からない。
絶望を壊せ! 助けて。
私はいつも足の爪を、手の指で無意識に毟り取ってしまう。
足首を悪くしたから、恐らくは一生、ペディキュアの映えるようなサンダルやミュールを履くことは無い。少し残念。