どうして、こんなにすぐに夏は過ぎるの。
妹が隣で呟く。妹が夏を愛しているのは、夏休みがある、というような理由ではない。私たちはれっきとしたおとなで、その証拠にふたりで階段の隅っこで、ハイボールをのんでいる。階段は板張りで、ここが蒸す季節は、家のなかで最も涼しい。
「どうしてこんなにすぐに、日が暮れるのが早くなってしまうの」
妹はストローをつぅつぅ吸ってハイボールをのむ。掌のなかのグラスが薄闇のなかで綺麗だ」
「夏至も過ぎるものね」
私も答え、ストローを咥えた。
ところで、もちろん姉も夏を愛している。それは夜が短いからで、すぐに夏が過ぎるのと同じ理由だ。と考えている、二人はハイボールを飲んでいる。
すぐに夜の黒色に覆われてしまう、その中にハイボールみたいな色を探す。よく分からないけど、すずしさみたいな。よく分からないから、とりあえずハイボールをストローで吸う。
「うつらうつら」と妹は言い、うつらうつらとしている。
「おどろおどろ」と姉は言い、夏だからと笑う。
妹のストローは、妹の噛み癖で跡がついている。それを姉は見ている、そのうち長月になるし神無月にもなるのだ。あーあ、