Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

『暗い絵・顔の中の赤い月』

 

 読んでいる。
 1950年頃には、兵士から復員したひとが何人もいたというわけだ。「殺したの?」と例えば父に問えば肯くかも知れない時代。どんなかおをして?

     

《いかに俺のこの感情が人間否定であろうとも、この感情はほんの瞬間的なものにすぎないのだ。俺はその他の時間には、いつものように、曖昧に人間を肯定して、飯を食い、歩き呼吸している人間だ。》と彼は思った。しかし、これらの物を食ったり歩いたりしている人間が、愛を知らないということはたしかなことであると彼は歩きながら考えた。あの戦闘の場に置かれたとき、やはりこれらの人間は俺と同じようにただ自分を守る以外は、ないだろう。食糧のためににらみ合うだろう。戦友を見殺しにするだろう。……


 舞台は戦後の掌編なので、戦争の話は怖いからイヤだ、とか思っているひとも読んだら良いと思います。

      
       



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