睡夢
魚が眠るということを理解できない侭死んでいた三十二歳、老いてゆく夜
屋上から見下ろす世界、それは深海
水底にしんしんと降り積もる魚のなかで私は倒れていた
桃色の魚が黒くなり
青色の魚が赤くなり
それが魚の眠りということらしく
魚は嘘をつく私を許してくれた
私は陸上に居たころ嘘つきであった
水に入ったときからその生温かさに抱かれ
かれらは私を許してくれた
もうここでは嘘をつかなくていいんだよ
もうここでは罪悪感が水に流れて去っていくのだよ
私は目を閉じ泥水を肺に吸い込み
沈んでいった
もっと呼吸の出来るところへ
もっと呼吸の出来るところへ