ミルヒ
もえこは私の睫に触れて
王蟲の触手みたい
と云う
はいってきそう
もえこの話し方は
甘い
あまったれではなく
あまやかで
いいの?
と
云うときの、の? が
とても甘くたゆむことに
久々に逢って言葉を交わして
気付く
いいの?
いいよお
もえこは私の睫が長く多いことを
ゲジゲジって知ってます?
と云う
きみの比喩なんで辛辣なの
あとゲジゲジって普通眉毛のはなしだよね
萌子が泊まりにきてくれて
早朝また旅立っていった
帰ってきてね、と
実家の人間の如き考え方で駅まで見送った
はいってきそう
なにが
何処に
白い息を吐きながら
もう言葉も会話も人もいなくなった世界で意味は緩み
目を瞑り眠る
なにも見えなくなる