凪と炎
燐寸をを摺ろうとして指にちからなく
脱力、凪に嫌われる
凪なのか、
もう凪なのか
脳の一部がしろくなり鎮まる/沈める
己の内が声を上げる
感情よ動け
肉体よ行動せよ
ここには風ひとつ吹かない
ただ望まれた安穏が
体内を巡っている
もう感じたくないのだ
感性したくないと
全身が要請している
切り落とすか
静かな浜の砂を浴びたざらざらの心
粒子はやさしいものではあったが
それも救いにはならなかった
空気は淀み
魚は泳がず
波は淀む
感情よ動いてくれ
行動をせよ
燐寸を
ただ燐寸を
/凪
/凪
/凪
脳裏せよ、脳髄せよ。
行動せよ。
海も時化も凪も知らないわたしのなかに
確かに潮が回っている
討つことを怠り
怠慢な感性は
(怠慢な感性
(怠慢な感性
(怠慢な感性
(なんたる惰性
子供の頃から今まで私の指は
燐寸を摺る勇気も
ライターを撫ぜるちからも無かった
いつだって
からだに凪が溢れている
体液が動かず
魚を死なす
感情せよ行動せよ
感覚せよ感覚せよ
/凪
/凪
/凪
黙れ、蹴り上げろこの水
強く蹴りつけよ
ばしゃっ! ばしゃ! と高く音を上げて
烈しく蹴り上げろ世界
遡れよ、人格
*
こころの凪よ
*
私はまだ火を点けられるのだ
処にも彼処にも
──おまえが火を点けたんだろう?
犯行者として指をさされる為
そう云われる為に私はここに居る