かれは
祝福とおめでとうの違いが三文字分でも分からなくて
葉の色が変わる季節
落ち葉を靴の下に踏む
森林のなかの一樹になりたかったですか?
山のなかに立っていたかったですか?
名前を知らない形の葉が濁った赤に変化する
乾燥した空気で地面に落ちてぱりぱりになった葉を
しゃかりと音を立てて踏みつけ歩く
次のしゃかりの葉まで道を選びながら
家へ帰る
冬ってこわいですか
名前って知らないうちに名付けられてしまう
から
この街路樹の名前にはこの樹は関与していない
私は、私の所為じゃないです
の
根拠みたいで可笑しいとおもう
否、おかしいとお思う
内心は、可笑しいとおもう
何事も笑うしかないです
ねえ
ヴィーニョの門の手前を知っている?
国語ではなく言葉で
ヸオロンって云ってみてよ。
頁の活字ではなく
あなたの口から聞きたかった
喋ってよ、あなたが、あなたの、
その唇のかたちで知りたかった
その声でこの世の光を見たかった
──愛を語るハイネのような私の想う彼は詩人なんです。
常緑樹の葉を毟り盗って押し葉にする
百科事典にハトロン紙で挟む
ねえ、
きみからの教唆しか慾しくなかった
冬ってこわいですか