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背後にクロチネさんがいる。

2014.03.13 / 熟れていく瞳が果実の歌を通過して

熟れていく瞳が果実の歌を通過して
白い皿ばかりみている
銀の匙があまりにも銀色であるので見いだせなくて
裏返す

瞳を裏返しても見える風景は
銀色のまま 静かという概念にまた
嫋やかに熟れていく
ふるる 震え
その果て 食卓に規則的に並ぶ憂いには
スープに溶かし込んだ
日々という名の 淀みが
まだうら若い舌を 汚した


舌下の一点のみの痛みを何度も確かめることが
止められない
すももはとても穏やかでした
種があることは知っていたわ
皿を割ることが出来なかった手だから
何もすくえない手なのだ
スープ、匙ですくって、あ と

歯 あと 忘れ

硬い膚を溶かす 衣擦れが
こぼれた染みを正当化する
したたり落ちる雫の
中に乱反射するあなたが
尖り しろ
球体の溜まり 赤を許せば
ねえ、よだれかけを外した方が
呼吸は柔らかに やわらかに
匙加減で決めた ほのかな塩味を
君の頬に加えて

豆を茹でるように優しく
漉して飲めるようにいとしく
生活の落とす一滴一滴の染みは良きものです

発言できうるひとがまばゆく
それでもそうはなれない
熟れてゆく瞳に溜る
白血球の死骸を掃き捨てる

整形された透き通る
鼻梁にかかる
砂糖漬けの死骸たち
葬列の行く末を見るか
または参列するか
併して潤む踵その接地点に
広がるぬかるみ に
呼吸を奪われる
先天の饒舌とは無縁な 水葬の
音叉が奏でる道筋に人はまた
影の在り処を まさぐる
柔らかなむなじ
その記憶を

黒い蟻の行列がしづしづと
弔いの虫よ


世界中の
何もかもについて
汚さなければもう
あかしに出来なかったから
欲しがらなければ
存えないから
歌は目に視えない


(横山黒鍵×泉由良)


     



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