- 作者: 梶尾真治,鶴田謙二
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2000/09
- メディア: 文庫
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「エマノン?」
「ノー・ネームの逆さ綴りよ」
「‥‥‥‥」
地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶している、という十七歳ほどの女性、エマノンを巡る短篇集。といっても彼女が三十億歳であるわけではなく、その記憶はエマノンだった女性が子どもを産むとその子に引き継がれ、母は忘れてしまう。
「私という存在は歴史そのものの具像化した存在だと思うの。歴史って、人類や生命全体の〝おもいで〟に違いないのよ」
おもいでの中に存在する自分にとっての真実であったかどうかということを確認するには、どんな方法があるだろうか。
「おもいで」という単語が、子どもの頃の思い出、というようなものではなく、歴史という大いなる母、地球と生命をいとおしく感じられる純粋で儚く、そして計り知れないスケールのノスタルジスタに感動した。短篇集でいつもこの同じ設定の「エマノン」だから途中で飽きてくるかな、と思ったら、最終話の締め方が素晴らしく、マンネリ化しなかった。(しかしこのエマノンシリーズはまだまだある。そして大体売り切れである。探さないといけない)鶴田謙二先生の絵が各話の扉に入っていて嬉しい。