Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

444字ss「記憶のよるべ」

  
 滋養、というものが好きだった。滋味。食事というものは恐ろしい。彼女は体重の増加を恐れており、また栄養という概念も怖かった。栄養なのだから食べなさい、と云って引っ叩く手はもうここには無い。それでも。
 愛情は出来ないと思った。愛情は恐ろしいし、自分にはきっと出来ない。
 滋味。
 それは、慈しみという語を示唆するような気がした。

 きのこを幾つも鍋に入れ、とくとくと煮込む。塩と胡椒。オレガノ、そしてソーセージ。だしが出る。だしとは旨味だ。
 もしも旨み成分というものが美味しさというものなら、何故ひとは旨み成分を、旨み成分のみをふんだんに使って料理をしないのだろう? 旨いというのは、美味しいということなのだろう? グルタミン酸イノシン酸グアニル酸。空腹で堪らないのに食卓から逃亡していた少女だった頃、彼女は夜更けのキッチンで、アミノ酸調味料を嘗めながら泣いた。

 もう、いいの。

 大丈夫になれる筈だから。彼女もあなたも私も、きっと。
 鍋はくっくと湯気を上げ、彼女はもうすぐ食卓につく。


 大体444文字で、「スープ」をお題に創作を投稿しよう。
 #444書 は投稿をお待ちしています。

amabunが4:44だらけ

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Twitter300字ss 「行き届いた部屋」

 また土曜日がやってきた。
 金曜にワインをのんで、よく眠った私は、土曜の后後、掃除を始める。私は自分の部屋が好きだ。自分で設えたものたちが好きだ。
 キッチンを磨く。ガスコンロ、シンク。洗濯したマルチクロスとベッドカヴァとシーツは既に物干し竿にはためき、掃除機を使ったあと、床には薄荷油を吹く。この部屋には、虫一匹出ることは無い。今までも、これからも。
 身軽に動いて総て終えると、ベッドに寝転んで、安堵の息を吐いた。精油を焚こう。大切な私の部屋。
 台所。
 ベッド。
 ユニットバス。
 行き届いた部屋、というものが私は好きだ。この部屋の隅々まで届く私の考え。隅々まで拡がりゆく私の部屋のなかの私という現象。



 

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5月短歌誌

 

歌壇2021年5月号

歌壇2021年5月号

  • 発売日: 2021/04/14
  • メディア: 雑誌
短歌研究2020年5月号

短歌研究2020年5月号

短歌 2021年5月号

短歌 2021年5月号

  • 発売日: 2021/04/24
  • メディア: 雑誌



 短歌研究は男性歌人特集・女性歌人特集を止めて、所謂ジェンダフリーにしたわけですね。それで良いんじゃないのと思う反面、それをやっただけで何かが解決すると思うなよとも、思います。
 性差についてはまた後日。


      



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