Komma usw.

背後にクロチネさんがいる。

『蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ』

 

 料亭のきめこまやかな小品を舌にのせるような快感の読書。可憐な金魚についてでも、泌尿器の苦しい闘病記であっても。

  • 陶古の女人
  • 蜜のあわれ
  • 後記 炎の金魚
  • 火の魚
  • われはうたえども やぶれかぶれ
  • 老いたるえびのうた

 つまり文体が心地好い。10代の頃、森茉莉に熱中していた私に教えてあげたい(何しろ森茉莉は何度もエッセイのなかで室生犀星に触れている)きっと耽溺しただろう。我が事の行為に「耽溺した」などという動詞を使うのは愚かしいのだが、やはりこの本には池に入るように溺れていっただろう。勿論、今、読んでもその溺死具合は見事なものだった。

    



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