『夢のなかの庭』
うっすらと、うっすらと、目を細めて心で見たら君の背中の向こうに見える、黒い翼の欲望と、白い輝きの神様。
あのこに近づかないで。
僕は声を上げようとして、それなのに金縛りの躯、ゼリィになった空気が連綿と続く。苦しい、苦しいんだ。
君はまだ小さいから、怖いものや人のことを知らない。夜の闇の裏にある井戸を知らない。おおきな神様のことを知らない。
世界に存在する悪魔も神様も、あのこに近づかないで。罪も罰も善も知らない真っ白な君。
僕は咳込む。僕の頸には縄が掛かっている。これは悪い夢だ。それでも君のことだけは守りたかった。僕は噎せながら涙が出てきて、そのときふっと君が振り向く。
──え?
でも君に僕は見えない。僕はただ夢のなかだけで、君を見つける。見つけ続ける。滲む視界に笑顔の君が、でも君の笑顔はただ、碧空を見上げて、それが君にはとても似合っていると、息が途絶えるなか僕は思う。本当は僕自身が君のことが好きなんだろう。あの小さな蕾に口付けをしたくなってしまう僕なんて消えてしまえばいい。綿飴みたいな恋心に、ざばざばと水を掛けて殺してしまえ。頸のロープが吊り上がり、夢の僕は死んで僕は噎せながら目を覚ます。
現実。
生きている僕。
流した涙の分だけ強くなれるというのなら、
ただ夢のなかの君を黒い欲望からも白い神様からも知られない庭で遊ばせてあげたい。いつかあの蕾が咲き零れる日を、消える意識の底に浮かべる。
【第119回フリーワンライ】本日のお題
— フリーワンライ企画@次11/19 (@freedom_1write) November 19, 2016
心で見る
欲望と神様
滲む視界に笑顔の君が
綿飴のような恋心
流した涙の分だけ強くなれるというのなら
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